明治、禁じられた恋の行方
14.復讐の行方

志恩は、阿片の輸入、所持の罪で拘束された。

このまま何もしなければ、全ての罪が志恩にのしかかってくるかもしれない。

千歳は、次の日、居候中の久我家で、麗斗、飯田と机を囲んでいた。

飯田によれば、近衛家は、家長である正隆が勾留され、屋敷には記者たちが押し寄せ、混乱の真っ只中であるという。


「俺たちは、徹底的に近衛家を叩きます。
 千歳さんから頂いた、別件で陥れられた可能性のある家族についても、追いかけますね。」

飯田が真面目な顔で言い、ニコッと笑う。

「八神には、色んなネタもらって、借りがあるんで」


ありがとうございます。

千歳は礼を言ったが、ずっと望んでいた報復が出来たにも関わらず、手放しで喜べずにいた。

今は、父様と志恩を助けることに集中しないといけないのに・・・!


「残された近衛家の人たちは・・・どうなるんでしょう。」

千歳は両手を膝の上で握り締めていた。

おい、千歳、と麗斗が咎めるように言う。

「まぁ、記者は押しかけますし、世間の目もあるので、
 かなり苦しい思いはされるでしょうね・・・。」

そうですか、と千歳は暗い声で言った。

「ごめんなさい、」 

志恩があそこまでしてくれたのに、私は覚悟が甘かった。

復讐をするということは、その相手の家族や、親戚、使用人、関わりのある人たち皆を巻き込むということだ。

それこそ、自分たちと同じような、直接は罪の無い人たちも。

自分が望んでいた事は、こういう事だったんだ。

「甘い事を、言うようですが・・・
 無実の罪で拘束されている人たちが開放されれば、
 私はもうそれ以上は望みません。」

麗斗がため息をつく。
飯田は困った顔をして言った。

「お優しいですね、・・・申し訳無いですが、記者というのは、もうこうなったら、加減出来ない津波のようなもんです。」

「いちおう、お気持ちだけは分かっておきます」


その後の飯田、そして、出版社の動きのおかげで、
まず千歳の父、具忠が、
そして、その他無実の罪を背負わされていた人たちが開放された。
< 93 / 97 >

この作品をシェア

pagetop