夏が残したテラス……
「いや、約束はしていない」

「商品開発部の桐嶋さんですね」

受付の女性は、パソコンのキーボードを打ちながら、俺のを首から下がっている社員証を見て言った。


「三日後でしたら、社長のご都合を伺う事が出来ますが」

 女性の少し馬鹿にしたような言葉にイラっとし、少し強めの声を上げた。
 三日なんて待てるわけがない。それに、三日待ったところで合わせてもらえるとは限らない。


「今すぐ話がしたい」


「それは、ちょっと……」

 まあ、そうだろう…… 
 ただの平社員がここまで来る事だって、疑い深いものがある。だが、俺は社長と話がしたいい。

 その時だ。

「どうした、海里?」

 後ろからの聞き覚えのある声に振り向いた。


「専務。この方が、どうしても社長にお会いしたいと……」


 兄貴は、俺の顔を見て、どうしたのか? と言うように、眉間に皺を寄せた。


「社長と話がしたい」

 俺は、兄貴の目を真っ直ぐに見て言った。

 兄貴は、小さく息を吐くと、

「今、社長は?」
 兄貴は、受付の女性に向かって言った。


 「お部屋です」

 「一人か?」

 「はい」


 「海里、俺も一緒でいいか?」


 「ああ」

 俺は、ほっと息をついた。

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