夏が残したテラス……
大阪で、俺は大内代表と取引のアポを取った。

 部下二人を連れて、大内代表の部屋のドアをノックした。

「はい」

 甲高い声で返事をしてドアを開けたのは、由梨華だった。

「志賀です」

 俺は、丁寧に頭を下げる。取引先の相手として、正しい行動を取っただけだ。

 俺の後ろの部下に、目を向けた由梨華の顔が、曇り始めた。

 部屋に、入ると部下二人が挨拶をした。

「由梨華、席を外しなさい」

 大内代表が、重い声を上げた。


「ええ!」

 由梨華は頬を膨らませた。


「仕事の話だ」

 大内代表の声は、少し大きくなった。
 由梨華は、俺を見ながら渋々と部屋を出て行った。

 その後、取締役である専務を呼び出した。


 俺は、大内代表の行動に、意外に話の分かる人なのかもしれないと思った。

 俺は、部下に資料の提示の指示をした。


 俺達のプレゼンを、二人は黙って聞いていた。
 俺達だって、誠意という物がある。消して、大内財閥を潰す事が目的では無い。ホテルの再建が目的である。


 代表と専務は、お互い目を見合わせた。


「志賀さん、一つだけいお聞きしてもいいかな?」

 大内代表は、問うように俺を見た。
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