夏が残したテラス……
「俺の事で、あんなに感情むき出しに怒ってくれて…… 嬉しい……」


「な、何よそれ…… 私、感情のコントロール聞かなくて、本気で悩んだんだから……」


「ふっ。奏海の感情が戻って良かった…… 俺に感情が向けられて良かった」 

 感情が戻って良かったなんて、美夜さんにも同じ事を言われた。私は自分でも気づかなかったのに、海里さんは心配してくれていたという事なんだろうか?


「よくないよ…… 苦しかったんだから……」


「それでもいい……」


「よくない。それに…… 志賀グループの息子なんでしょ?」


「ああ、それは本当だ……」


「どうして黙ってたの?」


「聞かなかっただろ?」

 海里さんは、自分のせいでは無いとでも言うように目を軽く開いた。


「はあ?」

 私は、海里さんの胸から、ぐっと顔を上げた。


「ごめん、ごめん。気を使われたくなかったんだ……」


「どうして?」


「ちゃんと、俺を見て欲しかった」


「でも、由梨華さんと結婚すれば、志賀グループのためになるんでしょ?」


「はあ―。よくまあ、色々と頭の中に入っているもんだ? そりゃ混乱するわな」

 海里さんは、呆れたように小さなため息をついた。


「だって……」


「それは無い。俺を信じろ」


「うん。でも、何を?」


「ばか! 大切だって言っただろ?」


「妹として?」

 私は、この際だと思い、胸の中のモヤモヤを全部口にした。


「ばか! 妹にキスするかよ?」

 そう言った海里さんの口は、そのまま私の唇に重なった。

 そっと離れた唇は、そのままの近い距離で動き出した。


「俺も、奏海に言いたい事がある」
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