夏が残したテラス……
あまりに近い距離で視線をぶつけられ、離れようとしたのに両手で頬を押さえられた。

「な、何? 私は何もしていないわよ」


「高橋に迫られただろ? 俺が知らないと思ったか?」


「げっ…… 迫られたって訳じゃ……」

 何で私が、こんなにおどおどしなきゃならないんだ。


 だけど、海里さんは私を脅すように睨みつけるとフっと鼻で笑った。


「俺が、きちんとケリつけておいたから」

「はっ? どういう意味よ?」


「高橋の奴が、奏海の事を守るような事言って喧嘩売ってきやがるから、買ってやっただけだ。俺の物に、気安く近づくなって言っただけだけどな……」

 海里さんば、口を横にして嫌らしくニヤリとした。いやらしいのにカッコいいと思う私の頭は、おかしくなってしまったのだろうか?


「いつのまに……」


「手遅れになる前に、先手を打つ。それが俺のやり方だ」


「意味がよく分からない」


「いいよ、分からなくて……」



 海里さんは、軽く唇を重ねると私を優しく抱き寄せた。


 その暖かさと安心感に、私はいつの間にか眠ってしまっていた。


 嵐の風と雨が、静かに去って行った事にも気付かないまま……
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