夏が残したテラス……
朝目が覚めると、ソファーには海里さんの姿が無かった。
 夢でも見ていたのではないかと不安になり辺りを見回した。目に入ったテーブルの上に並ぶマグカップに、ほっと嬉しいため息がもれた。

 階段を降りると、テラスからガタガタと音がしている。
 テラスへでると、手すりを直している海里さんの姿があった。

「おはよう……」


「おお、おはよう…… ほらこれ」

 海里さんは、立ち上がるとポケットに手を入れ何かを取り出した。

「あっ」


「嵐が治まれば、簡単に取れるのに……」

 海里さんは少し怒ったように、白い石のブレスレットを差し出した。


「ありがとう……」

 外れたチェーンも綺麗に直されていた。
 私はブレスレットを腕にはめると、嵐の後の、まだ雨の雫が残るテラスの上から、海に向かって手を伸ばした。ブレスレットの白い石が、海の光りに混ざりキラキラと光る。

「綺麗……」

 海里さんは、修理が終わったらしく、手すりを揺らし確認している。


「なあ、奏海。波に乗らねえ?」


「えっ? うん!」

 少し驚いたけど、海里さんと波に乗れるのは、特別の時間を共有できるみたいで嬉しかった。

 私は、海里さんに向かって笑顔を向けた。
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