幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「可哀想な友達のあなたがいなくなったんでしょ?助けられないまま、力不足を感じて。『自分だけ幸せでいいの?あんなに可哀想な子を放っておいて』って。自己嫌悪したんじゃない?
じゃなきゃ、あんなに周りを助けてばかりの人になる筈ないもの。あなたのせいで苦しい生き方を強いられてるのがわからない?」
そういえば涼介のノートのページには、私がいなくなった後に「今日ほど自分のことが嫌になった日はない」と書いてあった。
小早川さんの指摘に深海の底までブクブクと落ちたような心地がする。
「もういい加減解放してあげなさいよ。悲劇のヒロインぶってちやほやされるのって楽しいの?
あなた、何にも言わなくたって可哀想なオーラ振り撒いてるのよ。『助けて、助けて』って煩いくらい。
良い大人になってまで自分の家庭環境をネタにしちゃって。血は争えないっていうか、やることは母親とおんなじよね。」
「……っ」
こんなに苦い気持ちになるのは、全部本当のことだからだろう。
「小早川さん………もうわかったから、やめて。」
「な、何よ」
「それから、ありがとう、気付かせてくれて。私は、何もかも、ずるかったね。」
小早川さんは訝しげに眉を寄せる。私の気持ちがちゃんと伝わっていると良いのだけれど。
「小早川さんの言うとおり、涼介のこと解放するよ。……だからお願い、私に協力して。」