幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「さっきはありがとう。

ごめん、なんか変な事言っちゃったみたいで……涼介がいてくれて助かった」


飲み会の帰り道。みんなと帰る方向が徐々に別れて、涼介と二人だけになったときにお礼を言う。


涼介は私が今よりずっとマトモじゃなかった頃を知ってる。カワイソウな子供だった私を今も覚えてるんだと思うとじくじくと胸が痛んだ。


「そういう顔するなよ、お前が恋愛にどんなスタンスだろうが自由なんだ。周りにとやかく言わせることじゃない」


「うん……」


涼介はさっき私が言った事について何も聞かないでいてくれて、それがすごく助かった。


「変な事言って恥かいたのはお互い様だ。

いや、俺の方が100倍くらい恥かしい。結婚とか早とちりして……あれは一旦忘れてくれ」


「ふふっ、涼介変な酔い方するんだもん。抱き付き癖でもあるの?」


「忘れろって」と髪をぐしゃぐしゃと強く撫でられて、頭がぐらぐらと揺れる。


「うわぁっ。お酒飲んだ後に揺すらないで!酔うってば」


「ははっ、お前頭ちっちぇーし軽いな」


「遠回しに馬鹿だって言ってない!?」


その後もふざけて髪を撫でてくる涼介に気を取られて、いつの間にか泣きそうな気持ちを忘れていた。
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