幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
その約束通り、週末には涼介と丸の内を歩いていた。涼介はオーバーサイズのパーカーにチノパンを合わせて、髪型もラフに下ろしてしていた。スーツ姿とは違って、親近感のある可愛い雰囲気が漂っている。
近頃すっかり涼介を目で追いかけている自分がいる。透明感のある瞳に、ほんのりと色気を放つシャープな顎のライン。考え事をするときに目を伏せる癖まで瞼に焼き付いている。
「まずはアンルージュの新しい場所の下見でもするか」
「うん、見たい!」
アンルージュの移転先は丸の内のビルの中に決まっていた。
移転先として挙げられているたくさんの場所に行って、夜に買い物をしたお客様が危なくないかどうかなどを調べて候補を絞ると山下さんがその中から一番良い場所を決めてくれたのだ。
山下さんが作った資料には客単価予測、購買層、ブランドイメージ……といった指標がまとめられていて、どういうカラクリなのか店をオープンさせる前から日々の売り上げまで計算されている。
「もう工事が始まってるんだね」
ビルの一部が準備中のため囲われている。ここが新しいアンルージュになるんだと思うとドキドキする。
「店のレイアウトは小夜子が仕切ってるからなぁ。あいつ注文多いから普通より長くかかるかもな」
小夜子さんの本職はランジェリーデザイナーだ。インテリアなどもこだわりが強いから、新しいお店のデザインに張り切る様子は目に浮かぶ。
「どんなお店になるんだろ、きっと素敵なんだろうな…」
ちょうどその時、囲われたスペースの中から出てくる人がいた。
「あ!小夜子さん!!」
「あら環、久しぶりね。ちょうど店の設計を確認してたのよ。やっぱりファブリックの色合いは現場を見て決めたいし。都内なんて狭くなりそうで嫌だったけどこれなら……」
興奮ぎみに語る小夜子さんに、涼介は「立ち入り許可取ってあるんだよな…?」と渋い顔をしてる。
「やあね水瀬も一緒なの?二人で仕事中?」
「デート。プライベートだから邪魔するなよ」
ちら、と涼介を見上げる小夜子さん。何故か二人の間にぴりっとした空気が流れる。