幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
ここは場を和ませたが良いかもしれないと思って、とりあえず話題をふる。


「あのねっ、今日は同窓会に行く服を買うんだ!」


すると小夜子さんはぱっと顔を輝かせた。


「何よもう!そういうことなら早く私に相談しなさいよ!当然レディースよね?ほら、行くわよ」


「まさかお前ついて来る気か……?」


「水瀬、悲しいけど女の服を買うのにノンケの男の意見なんか何の役にも立たないのよ。この私と偶然会えたことに感謝するといいわ。」


気が付けば小夜子さんに手を引かれてぐいぐいと先に進んでいる。


「あんたも来なさい、財布兼荷物持ち」


「待て、お前が命令するな!」


小夜子さんと涼介は何か楽しそうに言い合いをしてる。さっきはどうなることかと心配したけど、どうやら二人は私の知らない間に気を使わない仲になっていたらしい。


小夜子さんは海外ブランドと思われるショップに入るとワンピースを手に取る。ダークトーンの直線的なカッコいいデザインで、背中がほんの少し開いているのがドレッシーに見える。


「あんたは本来こういうのが似合うのよ。甘過ぎず、男っぽ過ぎず。色気あるから服はミニマムがいいわ」


「や、その前にこのお店高そうだしやめといた方が、」


「気にしなくていいよ。こういう服着てる環も見てみたいから、気に入るなら俺が買うし」


値段を言い訳に逃げようとしたら涼介に笑顔で止められる。

……その顔をされると駄目なんだってば。


「オーク社員の年収なんて桁一つ違うって話よ?値段なんか気にしないで良いわよ」


「何でお前に言われなきゃならないんだ」


「良いから、さぁさぁ早く」


急かす小夜子さんに背中を押されてフィッティングルームに入った。こういう時の小夜子さんには昔から逆らえた試しがなく、覚悟を決めてワンピースを被る。


「あ……大丈夫になってる……」


着替えても息苦しくならない。

似合うかどうかはこの際置いておくとして、素敵な服に袖を通すのが楽しくなっていた。可愛いもの、綺麗なものを身に付けても罪悪感が無いなんて初めてだ。


涼介が私を変えてくれたんだと思うとじんわりと嬉しい気持ちが込み上げてくる。


だけど、ほっとしたのも束の間、フィッティングルームのカーテンが勝手に開いた。


「水瀬に惚れたわね?」
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