幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「うわ、小夜子さん!?何言ってんの……!」


「私くらいになると見りゃわかるのよ。あんたが本当に恋愛できる日が来るなんてね……。

水瀬なら今あっち行ってるから平気よ」


さっとフィッティングルームに入った小夜子さんはワンピースの胸元を引っ張って中を覗く。


「まだそのアスリート用のぼろっぼろのブラ使ってんのね。

今さらあんたに言うことでもないけど、こういうおしゃれをするならマトモな下着を着なさいね。あんたもお客様にアドバイスしてる立場でしょ?」


「うぅ……ごめんなさい」


小夜子さんに下着を見られても恥ずかしくはないんだけど、『アンルージュ』に雇われている身としては非常に気まずい思いである。

私はアンルージュで売られている下着をちゃんと身に付けた事がない。フィッティングの勉強のために試着はしてるけど、女らしい服が着られないのと同じでどうしても着れなかったのだ。


「まぁそれでもこのパンツよりマシだけど」


小夜子さんはスカートも容赦なく捲って「あー……」とげんなりした声を出す。


「ボクサーブリーフは無いわねぇ。あんたマジで男物はいてない?」


小夜子さんの指摘どおりコンビニにも売ってる普通の男物のパンツだ。これ以上怒られないために「ふへへ」と笑って誤魔化す。


「とにかく、下着がこんなんじゃせっかくの服が台無し。まだあの男に見せるのは止めなさい。」


「涼介に見せるとかそういうのじゃ…」


「好きな男のために装うのは特別なことよ。不安な顔してないで、楽しみなさいな」


小夜子さんが色っぽく笑う。小夜子さんは体は男の人だけれど、こういう表情をするとすごく妖艶で綺麗だ。


「小夜子さん、私なんかが恋愛してもいいのかな」


姉のように慕っている小夜子さんが相手だからか、つい普段は言えないようなことまで言葉に出ていた。それでも、小夜子さんは優しい微笑みを浮かべてくれる。


「馬鹿ね。恋はするとかしないとか選べないのよ。気付いたら勝手に落ちてるものなの」





着替えてフィッティングルームを出ると、涼介は私と一緒に出てきた小夜子さんを見て驚いていた。


「お前、何やって……!環の着替えを覗くなよ!」


「あら、そんなの今更ね。私はこの子のキレイに割れた腹筋のカタチまでよーく知ってるのよ。」


勝ち誇った笑みを浮かべる小夜子さんに、涼介は眉間のシワを深くする。

小夜子さんったら、腹筋割れてることは涼介にバラさないで欲しいんだけど……!
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