幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
淡くて優しいキス。唇が離れるとまたそっとふさがれる。息が苦しいわけでもないのに、キスを繰り返すうちに膝の力が抜けて、背後のソファに手をついた。
「この気持ちの百分の一でもいいから、環にうつればいいのに」
「…っ」
涼介の切なげな声に胸の奥が鳴動する。こんな感情知らない。知らないうちに涼介の腕を掴んでいたのを、横目で見られて初めて気が付いた。
「ごめん、限界」
ぎゅっと抱きしめられてソファに背中が沈んだ。涼介の呼吸が耳元に聞こえてドキドキが加速していく。
「…あっ」
首筋の一点が熱くなる。柔らかくて熱っぽい感触は唇に触れていたのと同じ。
むず痒さに体がびくっとして、でも涼介は私が身動きしても離してくれない。押し当てられた唇から痺れるような感覚が走った。
「もう小夜子にも、見せるなよ」
「え…?」
「肌を晒してほしくない。俺以外の、誰にも。」
ウエストから腰にかけて撫でられ体の力が入らなくなる。どうしてだろう、もっと触れてほしくて堪らなくなるのは。
けれど、意識が溶けていく中、シャツの内側に指先が滑る感触に慌てて身をよじった。
「…っ、待った、背中怪我してるから」
「……怪我?そんな素振り全然無かったけど…大丈夫か?見せて」
「わーーっ、見るのはもっと駄目!」
不思議そうに首を傾げる涼介から背中を守る。見られたくない。涼介の腕をぐいっと押し返すと、予想外の言葉が返ってきた。
「火傷の痕なら知ってるけど…」
「!?何で?」
「覚えてないのか、子供の頃に痒い痒いって俺に掻かせたろ」
「そんなことしたっけ…?」
「うん、あの時はけっこう困った」
シャツを背中の真ん中までそっとたくしあげられ、背中に涼しい風が通る。変色して爬虫類のようにのっぺりとした皮膚が、涼介の視界に晒されてると思うと体が震えた。
子供の時のこととはいえ、汚い痕を平気で涼介に見せていたなんて。
この火傷は、幼い私が掻きむしったおかげで痕が酷く残ってしまったらしい。
『ごめんね、ママが止めてあげられなかったから』
『だいじょうぶだよ!今は痛くないもん』
『でも、女の子なのに醜い傷が残って』
『ママもパパにぶたれてたんでしょう?しょうがないよ。』