幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
その翌日。死ぬほど恥ずかしい思いをして見つけたアイデアを山下さんに伝える。


「山下さん!販促品はガーターリングが良いですよ!!リバーレースのガーターリングがあったら絶対可愛いから!」


「何それ?」


まだ眠たそうな顔をしている山下さんにウェディングインナーの写真を見せる。

ガーターリングとは、ガーターベルトと同じストッキング止め。ベルトと違って太股の上にシュシュのように通して使う、二つペアになったリングだ。

ブライダルに使われるくらいなので、印象としてはセクシーよりも可憐、清楚な感じがする。


「左右で少しデザインを変えても可愛いんです。飾りに使うなら片方だけでもオッケー。販促品だから何個も集めたくなる方が良いと思って」


山下さんは写真をじーっと見つめた後で、私の頭をコツっと叩く。


「こういうのがあるなら早く言えよ!販促品だけじゃなくて商品にしないのか?ガーターベルトの百倍は売れるぞ」


「それがですね……これ、可愛いんですけど実用性は無いんです。ちょっと走ったりしたらストッキング落ちちゃうんで」


そんなものを何でわざわざ?と不思議そうな顔をする山下さんに説明を続ける。


「クリスマスなので、あんまりセクシー路線じゃなくて、でも恋人のためのお洒落があってもいいかなって」


昨日のぼせ上がった頭を冷やしながら、涼介に見られるならどんな下着を着けたいだろうって考えた。その答えの一つがガーターリング。


「実用性が無くても、好きな人の目に触れる一瞬の時間の為だけにお洒落したいっていうのはダメですか……?」


「ほお、らしくなく色っぽいこと思い付くじゃん。どしたの?」


「ど、どうもしませんって!俺は日々下着の事考えて生きてますから」


山下さんは「相変わらず残念な奴だな」と笑っていた。


「商品化したいものなら、実はまだたくさんあるんです」


頭に思い描いた案をいくつもスケッチブックに書いて山下さんに渡すと、ぎょっとした顔をされる。


「手書きかよ!それにすごい量だな」


話の続きは、就業後に会社のビル内にあるバーに場所を移すことになった。
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