幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「こんなになるまで環に飲ませたのか!?」
「そうカリカリするなよ。俺は親切にも『友達の環くん』を送ってきてやったんだぞ?」
「……」
「フツーの男友達で、ただの同居人の環くんでしょ?
まぁ男にしちゃ華奢で隙があるけど。
おまけに人懐っこくて明るい割に、内側がぐちゃぐちゃしてて脆いし」
「山下、環に余計な詮索するな。彼女は、」
急に体が揺れて頭がズキンと痛む。強く抱き留められた腕の中が暖かくて、意識は再び眠りの海に沈んでいく。
「『彼女は』…か。それで?余計な詮索はするな?
まさか、環くんのことは自分しか理解できないとか思ってんの」
……
オデコにひやっと冷たい感触がして、深い眠りから浮かび上がるように目が覚めた。
「ん…山下さん…すみません」
「寝言にしても少しは気を使えよ、あほ」
今度ははっきりと涼介の声が聞こえる。目を開けると冷たいタオルが落ちてきて、薄く笑った涼介と目が合った。
「…あれ…涼介?」
「そんなに酔うまで飲むなよ。心配したぞ」
冷たいタオルに、コップのお水。脱いだジャケットはきちんとハンガーにかけられている。忙しい涼介に、また迷惑をかけてしまったようだ。
「そだね、ごめん…」
「山下と何を話してたんだ?」
「えっと……なんだっけ? 下着の話とか、それから…人助けの話とか」
「人助け?」
「ねえ、涼介がこうして側にいてくれるのは、私を救おうとしてるから?」
「……。俺は環にできることなら何でもしたいけど。心配するな、こんな方法で環を縛り付けるのが卑怯だってことくらい、分かってるから。」
「…?」
涼介の手が髪の毛に触れると、もう一度深い眠りに落ちた。淋しそうな表情をしていたことは覚えているけど、翌日に目覚めた後には話したことはさっぱりと思い出せなくなっていた。