幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「俺、プロの時のたまきんの試合見たことあるよ!シュートをバシバシ決めて、あれはヤバい惚れる。本当に格好いいのな」
「本当!?その時声かけてくれれば良かったのに」
「きゃーって言ってる女の声が尋常じゃないんだよ、あんなの聞こえるわけねーって。
たまきんもノリノリで投げキッスとかしてるし、完全にアイドル化してさ」
話してくれた当時のことは、懐かしいと思うにはまだ苦い思い出だった。
外見で注目されてスタメンになることが続いてしまい、次第に『顔だけ』『運営枠』『実力もないくせに』と言われるようになっていった。試合が終われば、チームメイトと目も合わなくなる日々。
そんな私でもコートの上では格好良く見えていたなら、良かった。
「女子バスケの試合ってマイナーだから、盛り上げるために涙ぐましく努力してたんだよ。ファンサービスの投げキッスだってこっそり練習してね。」
「あはは、その練習ダセーな」
男子には格好の笑いのネタになったらしく、「言われてみると確かにやり方がわからん」「その前にキモいからお前がやるな」とか言い合ってる。まるで学生の頃みたいだ。
「じゃあ現役時代を思い出してやってみてよ。次にドアから入ってきた女子をキュンキュンさせられるか、たまきんのイケメン力を見せてみろ」
「ふふ、余裕だぜぃ」
ドアが開いた瞬間にファンサービス用に作り上げたキメ顔でウインクして、さらに投げキッス。もちろん笑われるのは承知の上。
でもウインクの途中から、ものすごい失敗をしたことに気が付いた。ドアを開けたのが涼介だったからだ。涼介が目の前の珍事にぽかんと口を開けたけれど、盛り上がっている男子の手前止めるわけにもいかない。
終わった後で横を向いて口元を隠した。あれは絶対に笑いを堪えてる……。
「環、面白い顔で何してんの?」
「……!ふぁ、ファンサービス、の……実演を」
「俺はお前のファンじゃない」
「知ってるよ!ちょっとした事故だってば!!」
涼介はくすりと笑ったまま、「『ラッキー』」と小さな動作で私にキスを投げ返した。
「……っ!涼介、そういうことするキャラだっけ……!?」
投げキッスなんて笑いのネタでしかないと思ってたのに、涼介がすると艶っぽくてうっかり赤面してしまう。
「あっはは、何だよ水瀬、案外手慣れてんな」
「たまきん、男にもやってくれるなら俺にもしてよ」
「もう何でも良いよ…」
さっき以上に恥ずかしい事なんて無いので、隣にいた川上くんにも同じようにしてみる。アイドル風キメポーズのオマケ付きだ。
「………」
「せっかくやったんだからせめて笑ってよっ」
川上くんがわざとらしくテーブルに突っ伏したりするので、みんなに「どうした!?」と詰め寄られてる。
「春風が駆け抜ける的な……ヤバい、ヤバすぎる。即死不可避」
地元で有名なおまんじゅうのCMみたいな事を口走ってる。即死とは失礼な。
川上くんの反応で興味をそそられたのか「俺にもやって」「俺も」と言われて、「しょうがないなぁ」と次なるウインクをしたところ、急に視界が手で遮られる。
「環、ストップ」
「本当!?その時声かけてくれれば良かったのに」
「きゃーって言ってる女の声が尋常じゃないんだよ、あんなの聞こえるわけねーって。
たまきんもノリノリで投げキッスとかしてるし、完全にアイドル化してさ」
話してくれた当時のことは、懐かしいと思うにはまだ苦い思い出だった。
外見で注目されてスタメンになることが続いてしまい、次第に『顔だけ』『運営枠』『実力もないくせに』と言われるようになっていった。試合が終われば、チームメイトと目も合わなくなる日々。
そんな私でもコートの上では格好良く見えていたなら、良かった。
「女子バスケの試合ってマイナーだから、盛り上げるために涙ぐましく努力してたんだよ。ファンサービスの投げキッスだってこっそり練習してね。」
「あはは、その練習ダセーな」
男子には格好の笑いのネタになったらしく、「言われてみると確かにやり方がわからん」「その前にキモいからお前がやるな」とか言い合ってる。まるで学生の頃みたいだ。
「じゃあ現役時代を思い出してやってみてよ。次にドアから入ってきた女子をキュンキュンさせられるか、たまきんのイケメン力を見せてみろ」
「ふふ、余裕だぜぃ」
ドアが開いた瞬間にファンサービス用に作り上げたキメ顔でウインクして、さらに投げキッス。もちろん笑われるのは承知の上。
でもウインクの途中から、ものすごい失敗をしたことに気が付いた。ドアを開けたのが涼介だったからだ。涼介が目の前の珍事にぽかんと口を開けたけれど、盛り上がっている男子の手前止めるわけにもいかない。
終わった後で横を向いて口元を隠した。あれは絶対に笑いを堪えてる……。
「環、面白い顔で何してんの?」
「……!ふぁ、ファンサービス、の……実演を」
「俺はお前のファンじゃない」
「知ってるよ!ちょっとした事故だってば!!」
涼介はくすりと笑ったまま、「『ラッキー』」と小さな動作で私にキスを投げ返した。
「……っ!涼介、そういうことするキャラだっけ……!?」
投げキッスなんて笑いのネタでしかないと思ってたのに、涼介がすると艶っぽくてうっかり赤面してしまう。
「あっはは、何だよ水瀬、案外手慣れてんな」
「たまきん、男にもやってくれるなら俺にもしてよ」
「もう何でも良いよ…」
さっき以上に恥ずかしい事なんて無いので、隣にいた川上くんにも同じようにしてみる。アイドル風キメポーズのオマケ付きだ。
「………」
「せっかくやったんだからせめて笑ってよっ」
川上くんがわざとらしくテーブルに突っ伏したりするので、みんなに「どうした!?」と詰め寄られてる。
「春風が駆け抜ける的な……ヤバい、ヤバすぎる。即死不可避」
地元で有名なおまんじゅうのCMみたいな事を口走ってる。即死とは失礼な。
川上くんの反応で興味をそそられたのか「俺にもやって」「俺も」と言われて、「しょうがないなぁ」と次なるウインクをしたところ、急に視界が手で遮られる。
「環、ストップ」