幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
「まさかたまちゃん、中学の時は水瀬の気持ちに気付いてなかったの?」


「へ?」


「やっぱそうか、あんたってやつはさぁ…
たまちゃん以外全員分かってたのに!水瀬の過剰過ぎる環愛!

たまちゃんが転校したときには百歳くらい老けたんじゃない?ってくらい顔が死んでたし。水瀬がどうにかなっちゃうんじゃないかって、みんな本気で心配したんだから」


「老けるって何だよ、中学生だろ」


「あーもう、水瀬も自分のことだからわかってないんだ…

ていうか、たまちゃんさっさと付き合えばいいのに。水瀬の何が不満なの!?」


「不満なんて、そんな、ね?」


恵美ちゃんがただならぬ眼差しで近付いてくるので、たじたじと後ろに下がった。


「ありがとう本田さん、でも返事は今じゃなくていいんだ。二人きりの時にちゃんと聞きたいから」


涼介が間に入って答えてくれた。

こうやって涼介に助けられるのはもう何度目かわからない。何も言わなくても困っているのに気付いてくれるから、涼介は周りのことをすごく見てるんだな思う。


隠れてほっと息をついて、一人になるためにトイレに行った。おもちゃ箱をひっくり返したような気持ちで落ち着かないのだ。

懐かしい友達に会えて、みんなが笑っている中に涼介もいて。興味津々に質問されるのはちょっと困るけど……でもこんなに幸せで良いのかな。



自分とは縁の無い世界にいるみたいだ。



「あれ?」
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