幼なじみの甘い牙に差し押さえられました
涼介だった。
急に現れるからびっくりしてぺたんとその場に座り込む。言葉の丁寧さとは裏腹に、さっき涼介は鞄をおもいっきり男の顔にぶつけてた。いつも温厚な涼介がそんなことをするのを初めて見た。
「訴えるならこちらも黙ってはいない。法廷に出ればどちらの立場が弱いかは明白」
「何だと?」
「環に接触するのは許さない。これ以上環に近付けば、お前の罪状を洗いざらい晒すことになるが」
ホテルの人に「お客様…」と声をかけられる。騒ぎになって周りに人が集まってきたようだ。
「じゃあアンタで良いや連絡先くれよ。コイツに用がある時に連絡する」
男がそう呟くなり、私が止める間もなく涼介があっさり名刺を渡してしまった。男は、サンキューと名刺をヒラヒラさせて立ち去る。
「環、大丈夫か?」
「だめだよ涼介…あんなのに付きまとわれたり、お金せびられたりしたら…」
「渡す理由ないし平気だよ。それより、
ホントに…どうした?」
これ以上心配かけたくないのに、差し出してくれた手を繋いでだらんとさせたまま、立ち上がれもしない。
涼介はしゃがんで、濡れた背中にジャケットをかけてくれた。
「ごめん…服、汚しちゃって」
「いいから、そのままじゃ風邪引くよ。人目があるから、少しだけ歩けるか?」