幼なじみの甘い牙に差し押さえられました

〝5月23日 環は光を溶かしたような顔をしてる。後輩に環様とか呼ばれて、女子はみんな環のことをキラキラしてると騒いでる。俺もそう思う。笑ってる環はキラキラし過ぎて作り物みたいだ。〟



〝5月24日 家に帰る時だけ暗い顔をする。〟


〝7月2日 環が環のお母さんと並んで歩いてた。お母さんと一緒にいる時は絶対俺に気付かない。環のお母さんが先に気付いて、目があって怖かった。〟



〝7月8日 環は心配されたり同情されるのが嫌いだ。笑って「ママの彼氏が」なんて言ってるけど、家に知らない男が出入りしてるのは本当は怖いと思う。相談してくれればいいのに。俺は頼っても仕方ないと思われてるのかな。〟



「そうじゃないよ……!」

私は涼介が頼りなくて相談しなかったんじゃない。
ただ学校ではフツウの子と同じでいたかった。学校にいる時間だけが安らぎだったから、嫌なことを思い出したくなかった。そのせいで涼介を悩ませていたなんて思いもしなかった。




〝4月13日 勝手に環のお母さんに会った。恋人も調べた。環には言えない。最近の俺は嘘が増えた。鍵を忘れたふりをする程度の嘘なら良かったのに。


だけど環も嘘つきだ。ハッピーとかラッキーだとか嘘ばかりついて、いつから本当のことを言わなくなったんだ?〟



〝7月12日 顔面に青アザ。環が小さい頃にはこれと同じようなのがよくあった。すっかり昔のことだと思ってたのに、「ママの彼氏」に殴られたらしい。何なんだよその男は!

頭の中で見ず知らずの男を殴って蹴って、刺して血まみれにした。でも余計に気持ち悪くなった。

あの環が一発食らう相手なんだから、実際は俺なんかボコボコにされると思う。それでも環が殴られるよりましだ。女の子の顔を殴る奴なんか人間じゃない。〟

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