Sign of Love
「今PCが手元にないのですが、社に戻ってから話をした方が早いですか? 七分くらいで着くと思うんですけれど」

「僕はどちらでも大丈夫ですが。十分後にこちらから掛け直しましょうか?」
「いえ、できればあの……」

 とにかく答えがほしい。データを取り戻せる見込みはあるのかどうか知りたい。会話を急かしては失礼だと思い直して言葉を飲み込んだとき、

「佐倉さん、安心してください。失くしたデータを復元させることは可能です」スピーカー越しに、わたしがいちばん聞きたかった答えが返ってきた。

「……よかった」
安堵と一緒に涙まで込み上げてきた。

 足が止まった。張り詰めていたものが一気に緩んで、こぼれ始めた涙を止めることが出来なくなった。道行く人の視線から逃れたくて、傘を低く持ち直す。

「消してしまったメールに、何ヶ月もかけて準備してきた、大事な企画の資料が全部あったんです。自分じゃ何も出来ないし、でも絶対にどうにかしなくちゃいけなくて。あのデータがなくなってしまったら、わたし本当に仕事辞めなきゃだめだって考えていて」
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