Sign of Love
「そうだったんですか」
 この微妙な沈黙の中に、この人がわたしにかける言葉を探しているのを感じる。

「ごめんなさい、泣いたりして。三十秒だけ待ってもらえますか」
「わかりました」

 今日が雨でよかった。淡いピンク色の傘に描かれた小花柄を見上げる。二度、三度深呼吸した。

「すみません、お待たせしました」
 仕事用の明るい口調で話そうとしたけれど、声は震えてる。それでもわたしは前を向いて、また歩き始めた。

「それでは、環境についていくつか質問させてください」

 できるだけ話さなくても済むように気を遣ってくれているのか、答えがイエス・ノーで済むように、会話を誘導してくれているのがわかる。……電話をかけてきてくれたのが、この人で良かった。

「うん、大体掴めました。ありがとうございます」坂巻さんは穏やかな声で言った。
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