Sign of Love
 横顔を見上げると視線がぶつかった。何か喋らなくちゃいけない。ちゃんとお礼も言わないと。でも、坂巻さんの目を見るとわたし――

 いつ到着音が鳴ったのか、エレベーターの扉がすっと開いた。

「ここで大丈夫です。ありがとうございます」
 坂巻さんはそう言ってわたしをその場に留め、ひとりでエレベーターに乗り込んだ。

「佐倉さん」

 名前を呼ばれて、声が詰まる。懸命に自分を奮い立たせようとしたけれど、うめき声のような返事をするのが精一杯だった。

「企画、上手くいくように祈ってます。頑張って」

 最後くらい笑顔で「ありがとうございました」って言いたい。泣き顔なんて見せたくない。心とは反対に、熱くなっていく目元を押さえながら、わたしは深く頭を下げた。

扉が閉まってからようやく頭を上げる。吹き付ける風に、窓ガラスがカタカタと揺れた。窓を開いて道路を見下ろすと、ちょうど坂巻さんがタクシーに乗り込むところだった。
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