Sign of Love
「忘れるわけないですよお……。だって、あの時もし来てくれなかったら、わたしこの会社に残っていなかったから」

「『あのデータがなくなってしまったら、わたし本当に仕事辞めなきゃだめだって考えていて』って聞いた時は驚いたよ。……初めてだったから。そういう電話は」

 ああ、電話の会話まで覚えていたなんて。恥ずかしさに耳まで火照ってく。

「こいつ何言ってるんだ、って感じでしたよね。消したのはわたしなのに。突然FAX送りつけて、電話しだしたらすぐに泣き出すし。最悪ですよね」

 坂巻さんは「いや」と、微笑を浮かべた。

「すごく仕事に一生懸命な子なんだなって思ったよ。これはどうにかしてあげないと、って」

 それが、今無理に作った言葉じゃないって分かるから、胸にじんと響いてくる。込み上げてくる想いの行き場がないときに、目に涙が滲んでしまうのが嫌だ。嬉しいのに、どんな言葉を返したらいいのかわからなくなってしまう。
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