Sign of Love
「え」
 今朝から作っていた分が、全部消えてる。

「うそ」
 他のデータと開き間違えたかと思ったけれど、やっぱりこれは今朝わたしが作っていたファイルだ。

 突然エレベーターホールから音が鳴った。ぱっと振り返ると、坂巻さんが見えた。
 目が合う前に慌ててモニターに向き直る。ショックも動揺も全部心の中に仕舞いこんで、何事もなかったかのように書類を持ち上げたとき、

「佐倉さん、大丈夫?」急に後ろから声をかけられて、背筋がぴんと伸びた。
「はい?」振り返ることもしないまま、平静を装って返事する。

「ごめんね、驚かせて。もしかしてPC調子悪いのかなって」
「大丈夫です、自分でどうにか直せますから」

「うん、そうかもしれないね。……でも一応、状況だけ聞かせてもらっても良いかな?」

 一拍置いて、背中から優しい声が聞こえて来た。ひとりで変な意地を張っていることのほうが恥ずかしくなった。
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