願わくは、雨にくちづけ
「伊鈴から会いたいって言ってくれて嬉しかったよ」
「うん……」
「話したいことがあるんだろ? 食事をしながらでも、そのあとでもいいから、ちゃんと話そう」
「はい」
なにも言わずとも伊鈴の心情を汲み取る立花に、彼女は思い切って甘えてみようと思った。
本当なら、ひとりでじっくり考えて結論を出すつもりだったプロポーズの返事も、彼と導き出したっていい。
覚悟が決まらないのに、離れたくはないという我儘さえも、打ち明けようと思う。
(煌さんならきっと、わかってくれる)
そう思うことも伊鈴にとっては十分甘えているつもりだが、まだ許されるのなら、もう少しだけ――。
「伊鈴が考えてること、思い悩んでいること、話してごらん」
「うん」
愛でるような手つきで彼女の髪を撫でた彼は、調理の邪魔にならないようにと、再びリビングのソファに腰を下ろした。