願わくは、雨にくちづけ
「兄貴、彼女いたんだなぁ。忙しくてそれどころじゃなさそうだったのに」
「1年前から付き合ってるんだ。そのうち会わせるから。……お前はいい話ないのか?」
「別に俺のことはいいよ。で、彼女はなにをしてる人?」
「ESFOODSで働いてるよ」
「へぇ……結構大手だね。そこ辞めて、兄貴の嫁か」
「まだ辞めるかは決めてないけど」
「ふーん」
テンポよく話すが、樹はそれ以上を聞いてくることはなかった。
「ところで、あのベーカリーと知り合いみたいだけど」
「あぁ……まぁ」
「和菓子屋がパン屋とねぇ。どこで繋がるかわからないもんだな」
(なにもないけど、しいて言えば八神夫人のお気に入りってことかな)
「樹、あの店のパンを食べたか?」
「食べたよ。正確に言うと、食べさせられてるって感じだけど」
「ん?」
どういうことなのかと、せせりにかぶりつく樹を流し見る。