願わくは、雨にくちづけ
――(今日の取引先、大口になりそうな気がする……)
午前中、伊鈴が抱えている顧客からの紹介された新規取引先は、人気のある洋菓子店だった。
本社を訪問して、担当者から話を聞けば、今の取引先の商品の質が安定していないので、他社に切り替えようと考えているとのこと。
彼女が在籍している営業部では、卸売販売もしているので、大口の顧客にはロットに見合った価格を提示するようにしている。
相手にとっても損のない価格で、かつ大きく売って利益に繋げたいと伊鈴は考えていた。
もし、先方が希望があれば、オリジナル商品の企画や製造もできるのが、ESFOODSの強みだが、その場合は小口では販売できないと条件付きでなくては、上長の決裁が下りないだろう。
先方担当者にお礼を兼ねたメールを送るのに、どうしたら契約に結び付く最後の一押しができるか頭を捻る。
面会の席でも、きちんと話してこれた自信はあるが、顔を合わせていない先方の他の同僚や上司から、信頼が置ける企業と担当者だと評価してもらわなくてはならないのだ。