願わくは、雨にくちづけ
「煌さんに、今日話そうと思ってたことがあるんです」
「うん、なに?」
愛し合ったあと、ソファで伊鈴を背面から包み込みながら、白ワインを注いだグラスを傾ける。
「代官山のクロワッサンのお店のことなんですけど、閉店するかもしれないって話してくれたじゃないですか?」
「あぁ……。たぶん弟が動いてると思うよ」
「私も、なにかできないかなぁって考えてたんです。それで、うちの会社の小豆なら、あのクロワッサンにもっと合うあんこになるんじゃないかと」
「そうか、その手があったね」
さすが仕事熱心なだけあると、立花は伊鈴に感心した。
自社の商品に知識があるのは社員として当然だとしても、1度食べたクロワッサンに合う材料をマッチングするのは、誰でもできることではないだろう。
「でも、私はあと少しで退職する予定なので、そういう方法もあるって弟さんに伝えてもらえますか?」
「……退職って、伊鈴、辞めるの?」
伊鈴は彼の腕の中で小さく頷き、斜め後ろを振り返って微笑んだ。