願わくは、雨にくちづけ
「いいよ。何時から?」
「18時半くらいに店集合です」
「わかった」
よろしくお願いします、と丁寧に会話を区切った新井は、隣席で業務を再開する。
その横顔は年下の割に男らしくて、人気があるのも納得だと思った。
同僚が各々のタイミングでランチに出ていく。
あれから、由紀とは一緒にランチを取る機会が減った。
彼女が営業部に顔を出すことはあっても、お互いに多忙で時間が合わないのが理由だけど、拓也との過去を聞いたのかもしれないと、少し予感してはいる。
だけど、未だに彼女を責めるつもりはないし、伊鈴からきちんと説明することもないだろう。
もしそれが必要であれば、拓也が話をするべきだと思うからだ。
裏切ったのは彼のほうで、そんなことさえなければ今のこの現状はないはずで……。
(やっぱり、ちょっと寂しいな)
あんなに毎日話していたのに、フェードアウト気味な由紀の距離の取り方が気がかりなのだ。