願わくは、雨にくちづけ

(またそうやって甘やかすんだから……)

 会うたびに〝かわいい〟〝綺麗〟とべた褒めされ続けること、1年。
 会えない日はメッセージや電話で〝好き〟だとか〝愛してる〟とか……言われた方が恥ずかしくなるようなことを平気で言う立花の溺愛ぶりに、伊鈴は慣れることなく未だにドキドキさせられている。

 ましてや、今日は念願のスーツ姿に、眼鏡のオプション付き。
 細めの黒縁フレームは、彼の魅力をさらに引き出していて、ちらりと盗み見る以外に視線を向けられない。

(煌さんが会社にいなくてよかった)

 想像を大きく裏切って、素敵以外の言葉が見つからないほどの魅力に当てられ、伊鈴は改めて彼に恋をしたような気分になった。

 もし彼が同僚や上司だったなら、仕事も手に付かなかっただろう。
 毎日、彼に会うために出社する楽しみは増えたかもしれないが、他の女性社員と談笑しているのを見るだけで、きっと妬いていたに違いない。


「今日はどうして眼鏡なの?」
「いつもはコンタクトだけど、スーツと言えば眼鏡かなと思ってね」

 立花は、彼女を一瞥して、やわらかな微笑みを口元に浮かべた。

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