願わくは、雨にくちづけ
――翌朝、目覚ましに急かされることもなく、伊鈴は浅くなった眠りを手放した。
(何時頃だろう。……朝? それとも、もうお昼が近いのかな?)
遮光カーテンが引かれたベッドルームには、外の明かりがほとんど入らず、隙間から漏れ入る光だけではわからない。
5分ほど経った頃、彼女を守るように腕の中に閉じ込めていた立花も、ゆっくりと夢から覚めた。
(寝起きの煌さんも、すごく綺麗なんだよね……)
微睡と現実の境にいるような彼の顔をじっと見つめる。
伊鈴は、彼と出会った日も、初めて男性に〝綺麗〟と感じたのを思い出していた。
「……おはよ」
「おはようございます」
伊鈴が挨拶を返すと、彼はふにゃりと目尻を下げて微笑み、再びその胸に彼女を抱きしめる。
そこに、昨夜の彼は微塵も感じられず、別人のようだ。
「身体はどこも痛くない?」
彼に愛された翌朝は、もれなく体調を気にかけてくれるのは嬉しい。
だけど、それならあんな激しくしなければいいのにと、伊鈴は常々思っていた。