願わくは、雨にくちづけ
「大丈夫ですけど、もうちょっと優しくしてください」
「十分優しくかわいがっただろ? それに伊鈴を愛して味わい尽くすのは、俺の日課だからやめられないよ」
立花は、ゆっくりと伊鈴の背中を撫でて髪にキスを落とす。
彼の愛情の傾け方は、彼女がどうにかして変えられるものではない。それは本人も伊鈴も分かっているけれど、雰囲気にのまれるとどうにも歯止めが効かないのだった。
時刻は9時半過ぎ。
思ったよりも早く目覚めたふたりは、ベッドから出てシャワーを順に浴び、身支度を整えてから少しすると、朝食が運ばれてきた。
作り立てのオムレツは卵がふわふわで、コーンスープは具だくさん。サラダの野菜はとてもみずみずしく、ローストビーフはしっとりしていて、自家製ウインナーはジューシーだ。ホテルで焼いているパンは香ばしく、クロワッサンは歯触りも香りもいい。
「そうだ。伊鈴はクロワッサンが好きだったよね?」
「大好きです」
「うちの贔屓筋から、すごく美味しいクロワッサンの店を教えてもらったんだ。今度買ってくるから楽しみにしてて」
立花は八神夫人が好んでいる、代官山の店を思い出した。