願わくは、雨にくちづけ
それから少しすると、雨が降り出してしまったので、ホテルでゆっくり過ごすことになった。
夕方過ぎまで、ふたりは館内の書店で買った本を読んだり、立花は持ち込んでいたタブレットで仕事を済ませたりと、普段と変わらずに過ごした。
「伊鈴」
「なぁに? ……んっ」
隣に座る伊鈴を構わずにいられない立花が、ことあるごとにキスをしてくるので、すっかり唇は熱を持っている。
伊鈴は彼がこんな甘く愛してくれるタイプだとは思っていなかったし、立花も自分がこんなに夢中になる恋は初めてなのだ。
気づけば舌が絡まり、コーヒーの香りが混じった吐息が重なる。
立花は彼女の背中を撫で、髪を掻き抱くように乱し、数分してからようやく唇を解放した。
――18時過ぎ。窓の向こうは雨上がりの夜景が広がっている。そろそろ夕食時なので、部屋を出ることにした。
伊鈴は買ってもらったブレスレットを早速着けて、グレンチェックのタイトスカートに白ニットと合わせ、洗面室の鏡でその輝きにときめいた。