願わくは、雨にくちづけ

「ここにもよく来るの?」
「本当、たまにだけどね」

 ホテルのバーラウンジを日常的に利用すると知ったのも、1年前のあの日。

(あれからずっと、煌さんに愛されてきたんだなぁ。こんなに幸せなことってないよ……)

 弧を描いたソファから摩天楼の夜景を眺め、伊鈴は想いを馳せる。
 比べるものではないが、彼に負けないくらい気持ちを伝えてきたつもり。
 だけど、プロポーズの返事を保留しているので、遠くないうちに心を決めようと、どこか気が逸っているのも事実だ。


「乾杯」

 立花はブランデーとクラッシュアイスを、伊鈴は白ワインをグラスで頼んだ。
 芳醇さを味わってから彼を流し見れば、立花が先に彼女を見つめていた。

(伊鈴は受け入れてくれるだろうか。また悩ませてしまうかもしれないけど、話さないわけにはいかないからな……)

 立花は今夜打ち明けると決めた真実を、いつ口にするか機会をうかがっている。
 彼女を傷つけることはないだろうが、プロポーズでさえ慎重な伊鈴に、また新たな悩みの種を蒔いてしまうようで、少し心苦しいのだ。

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