願わくは、雨にくちづけ
時刻は23時40分過ぎ。
立花もブランデーからワインに変え、ボトルを入れて伊鈴と同じものを飲んでいる。
ふたりは他愛ない話をしながら、ドライフルーツやチーズ、肉料理などをつまみにお酒を楽しんだ。
「伊鈴」
「なぁに?」
端正な顔が引き締まり、スッと線を引いたようなまなざしが伊鈴に向けられ、穏やかだった空気に緊張が走る。
(そんな真剣な顔で、どうしたんだろう……)
「今夜は、大切な話をしたいんだ。聞いてくれる?」
「……はい」
互いにワインをひと口飲んで、グラスを置く。伊鈴はドキドキしながらも、改めて姿勢を正した。
「今まで、何回かプロポーズしてたつもりだったんだけど、気づいてくれてた?」
「っ……あ、あのっ、煌さん」
(どうしよう。やっぱり煌さんも待つのが限界だったんだ)
「気づいてくれてたんだね。大丈夫、焦って決めなくていい。その前に、知っておいてほしいことがある」
伊鈴の気持ちを察した立花は、答えを急かさないと決めていた。