氷室の眠り姫
ーーーー暗闇の中、何かが聞こえてきた気がした。
(音……?それとも、声?)
聞き取ろうとしても意識がぼんやりとして判断ができない。
(あぁ……何も考えたくない、何も考えられない…)
そう思うのに聞こえてくる“それ”は意識を刺激してくる。
(お願い、放っておいて……このまま眠っていたいの)
心を閉じ、意識を更に深淵の闇まで落とそうとする。
(目が覚めて、残酷な現実を受け入れたくなんてないの)
切実な願いに反して“それ”は届く。
『………たとえ…』
聞こえてきたのは切実な色に染まった、己の魂を揺さぶる声。
『たとえ、紗葉が望んでいなくても……』
忘れたくとも忘れられない声。
『紗葉が目覚めるまで、傍にいる』
ドクンッと心臓が震えた。
『だから……早く目覚めてくれ』
暗闇の中に小さな光が生まれた。
『………紗葉、愛してる』