蒼い月と紅の灯火
【朱里side】
豹変したように私に覆い被さる朔夜にどうすればいいのか分からなくて涙がじんわりと出てくる。
「ほんと、馬鹿だな」
「え……?」
頭の中がぐるぐるしていたものが、一瞬で停止した。
唇に当たる柔らかい感触。
目の前にあるのは朔夜の顔。
ゆっくりと離れていく朔夜。
「あ、あ……」
一瞬だけ、何されたのか分からなかった。
でも、理解した。
キス、されたんだ……。
その瞬間。涙がこぼれ落ちた。
「初めて……なの、に」
あろうことか、朔夜に奪われるなんて。