蒼い月と紅の灯火
【朔夜side】
まさか、町で蒼兎と会うなんて思ってなかったんだ。だから、油断していたんだ。
「朱里ちゃんは、知らないとだよね」
「え?」
「確かに、見つかったのは蒼兎だよ」
「そう、なんですね」
困ったような顔をする。
それでも、話さないといけない。
だから、全部話したんだ。
俺らは小さい頃に両親を失った。
人間の、せいで。
食材を調達しにいったところを人間に見つかった。
親二人は変化が上手くなくて、ほとんど狐の姿で活動していた。
だから、人間に殺された。
二人だけになって、今にも死にそうになったところを、雅さんと桜さんに助けてもらった。
それでも、蒼兎にはまだ、人間に憧れる心が残っていた。
それが悪いと言っているわけじゃない。
でも、好奇心だけじゃ駄目な時がある。
それが、今回の件だった。
あいつは必要以上に自分を責めた。
もう、十分に苦しんだのに。