エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
一誠さんのばか……。そんな甘いセリフと視線に、ドキドキするなという方が無理じゃないですか。
腹が立つのと裏腹に、一気に加速していく彼への想い。
もう、今さら止まれないよ。私……一誠さんが、好き。あなたとは偽りの関係にすぎないけれど、どうか今夜だけは夢を見させて。
だってあなたが言ったんだもの。今夜の私は、シンデレラだって――。
「……わかりました。私も、二人きりになりたかったんです」
彼の手をぎゅっと握り返して、素直な気持ちを告げる。一誠さんは柔らかく微笑んでくれ、私たちは会場の人々の間を縫って、バルコニーに続く大きな窓の方へと向かった。
バルコニーに出ると、冷たい夜風に肌を撫でられ、心地よかった。
持っていたグラスをテーブルに置き、私は手すりを両手でつかんで目の前に広がる夜景を眺める。
「気持ちいいですね、ここ」
「室内では空調が効いているとはいえ、人の熱気でだいぶ温度が上がってましたからね。温かい料理も並んでいますし」
私の隣で、手すりに背中をもたれさせてお酒のグラスを傾ける一誠さん。
パーティーらしくかっちりセットされていた黒髪がふわりと風で乱れ、そんな何気ない姿にすら胸がときめいた。