エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
『……彼女は汐月巴。僕が心から愛する、大切な人です』
あの言葉が、頬に触れた唇の熱が。全て演技でうそなんだという事実が、何よりつらい。
この気持ちの正体って、やっぱり……。
確実に芽生え始めている彼への気持ちに、そろそろ目を背けていられなくなってきた。
けれど、だからといってこれ以上どうしようもない。自覚したところで報われない想いを、これ以上育てたって切ないだけだよ……。
そう思って俯く私の手を、一誠さんのあたたかい手がそっとつかんだ。
「人目が煩わしいので、バルコニーに逃げませんか?」
「バルコニー?」
軽く周囲を見回すと、大きな窓の向こうに、お城を思わせる白い柵に囲まれて夜景を一望できるバルコニーがあった。
テーブルと椅子のセットも置かれていて、あそこなら確かに静かな時間を過ごせそうだけど……。
「いいんですか? 私たちだけあんな場所にいて」
「構いませんよ、どうせ僕は社長の代理ですから。それに……せっかく自分好みのお姫様が目の前にいるんです。二人きりになれる場所で、存分に見つめさせて?」