エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
彼はぼんやりしていた私の手を取り、もう一方の手を背中に添える。自然と密着したお互いの体に、ドキッと心臓が跳ねた。
ダ、ダンスって、こんなにくっついてするものなの……?
「足元ばかり見てはいけません。常にパートナーを見つめ、呼吸を合わせて」
言いながら、さっそくステップを踏む彼だけど、この状況自体をまだ処理しきれていない私が、ついていけるわけもなく。
「わ、とと、次、どっち……?」
右往左往しながらパニックに陥る私を、一誠さんは楽しそうに見ていた。
「右足を前。左足を横に。ほら、回って」
「そ、そんなこと言われても……ああああ」
つまずいて転びそうになる私を、一誠さんの強い腕が支える。
「す、すみません……」
「いいえ。みんな転びながら上達するものです」
本当に? 私が特別下手なんじゃないだろうか。
自信なさげな顔をする私に、一誠さんがやさしく告げる。
「大丈夫。きみは、僕だけを見ていれば」