エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
私は座っていたハイチェアをくるりと回転させ、ごく普通に床に足をつけた……つもりだったはずが。
「お、とと……わっ」
思っていた以上に酔いが足にきていて、バランスを崩した私は近くにあった壁に手をつく。
や、やばい……。狭い店なのに、カウンターから少し離れた、奥まった通路沿いあるトイレまでの道のりが遠く感じる……。
「……ま、お酒に強くもないのにあのカクテルを一気に飲めばそうなります」
背後で部長で呟いた声がして、私は頼りない顔で振り向く。
「肩を貸して? なんなら、個室の中にご一緒してお手伝いしましょうか?」
私の腕を自分の肩に回しつつ、後半部分だけ耳元で囁いた彼に、ぶわっと顔が赤くなるのがわかった。またそういうしょうもない冗談を……!
「い、いいですっ! ていうか、ひとりで行けます!」
「それは強がりというものです。ほら、もっと体重を預けていいですから」
身長の高い部長が、私に合わせてかがんでくれる。そういうささいな優しさにくらっとしそうになるたび、そんなの酔っているせいで生じている気の迷いだと自分に言い聞かせた。