エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
どうやら部長は、付箋のやりとりがお気に入りらしい。
仕事中、私が席を外して戻ってくると、パソコンに何かしら彼からのメッセージが貼ってある。
【今日は残業】
【コーヒーが飲みたいです】
【顔が疲れているけど、大丈夫?】
【金曜の夜、食事の後レイトショーの予定で】
……とまぁ、ささいなことから、デートの約束まで。
つい返事をしたくなるけれど、部長のデスクは別室で目立つから、私は同じことができない。
その代わり、私がメッセージを読んでふと彼の方を見るといつも目が合うので、なんとなく表情で伝えたり、コーヒーを入れて持って行ってあげたりする。
これが慣れてくるとなかなか楽しいもので、私は新たな付箋を見つけるたびに、自然と笑顔になっていた。
そして迎えた、デート当日のこと。
「さーて、待ちに待った週末! どう巴、一緒に飲まない?」
終業後のオフィスで、露子に誘われたけれど、私はぱちんと手を合わせて断った。
「ごめん、今日はダメなの。先約があって……」
「なんだーそっか。じゃあまた、お疲れ」
「うん。お疲れ様」
誰との約束なんだとか、深く突っ込まれなくてよかった……。露子は事情を知っているとはいえ、会社で堂々と“部長とデートなんだ”とは言えないもの。