エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「部長……」
「すみません、はじめは素通りしようと思ったのですが、汐月さんが困っているように見えたものですから……むしろ、お邪魔でしたか?」
「いえっ!」
思わず即答してしまった私に、部長はにっこりと微笑んだ。
もしかしたら、オフィスの窓から私たちの様子が見えて、助けに来てくれた……のかな。
だから、予定より早く出てきたとか……。なんにせよ、彼が来てくれて助かった。
安堵する私の様子を見て、成田くんは申し訳なさそうに苦笑した。
「汐月さん、ごめなさい。しつこくして、困らせて……今日は帰りますね、俺」
「いや、そんな、私の方こそ……。あっ、そうだ。恋愛相談ならさ、私より露子の方が適役だよ? 経験豊富だし、いろんなこと知ってるから、今度誘ってみて?」
私は親切のつもりで露子のことを教えたのだけど、その名を聞いた成田くんは動揺したように、私から目を逸らした。
どうしたんだろう。なんで、そんな態度……。
不思議に思っているうちに、成田くんは「失礼します」とぺこりと頭を下げ、私たちの元を去っていった。