エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「……どうしたんでしょう、彼」
「さあ。どうしたんでしょうね」
部長のおうむ返しはわざとらしくて、本当は思い当たることがあるようだった。でもそれを私に教えてくれる気はないみたいで、さっさと話題を変えてしまう。
「さて、ここからまた別々に歩くのも面倒ですし、店まで一緒に行きますか」
「……誰かに見られませんかね」
私は周囲を警戒して、ぼそりと呟く。けれど、部長の方は堂々としたもので。
「僕はきみの上司です。それこそ、“相談事があった”ということにすればいいんじゃないですか?」
……なるほど。同じ社内の同じ部署だと、そういう言い訳もできないことはない。
「じゃあそうなったら、口裏合わせてくださいね」
「ええ。でも大丈夫だと思いますよ。堂々としていれば、意外とばれないものです」
堂々と、ねえ……。半信半疑だったけれど、とりあえず部長の隣をつかず離れずの距離で歩き、ふたりでレストランへ向かった。