エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
電話を終えた彼は、疲れたようにため息をつき、部屋の中に向き直る。そのときふと目が合ってしまい、私は慌てて体の向きを変え、お皿洗いを再開した。
わざとじゃないとはいえ、盗み聞きしてたの、ばれちゃったかな……。秘密主義の部長のことだから、電話の内容聞かれたりするの、きっと不愉快だよね。
なんとなく気まずくて、勢いよく水を出しながら、お皿を流すのに集中していたその時。
すぐそばの背後に気配を感じた直後、大きなぬくもりが背中を包み込むようにぴたりと寄り添った。ウエストに腕が回され、ぎゅっと抱きしめられる。
「部長……?」
「僕は、巴が好きです」
耳元に触れた唇がささやいた言葉は、甘い。けれど、部長の声はどこか虚ろで、うわごとのようにも聞こえる。
「どうしたんですか、急に……」
蛇口から出る水を止め、彼に問いかける。けれど、彼が本心を語る様子はなかった。
「……別に、どうもしてないですよ?」
「でも……私たち、好き合って一緒にいるわけじゃ」
「だとしても、今の僕たちは“恋人”です。好きだと囁いても、何もおかしくない」