エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
小さく悲鳴を上げれば、リップ音を立てて、首筋から唇が離れていった。どうやら、強い力で吸い付かれたらしい。鏡がないから見えないけれど、おそらく痣になっている。
「……ダメですよ。恋人の気持ちを疑うなんて」
かすかに痛みの残るその場所をそっと指先で撫でながら、部長が私を叱る。けれどやっぱりその声には、かすかな動揺が滲んでいるような気がする。
部長の言う“恋人”って、なんなんだろう……?
最初こそ、私のリハビリだとか、新しい恋ができるようになるだとか言っていたけれど、本当は彼にとって“恋人”という存在が必要で、私がたまたまそばにいて……。
都合のいい相手に、偽りの愛を囁いているんじゃないの? そう、本人に直接尋ねる勇気はなくて。
「ごめんなさい……私も、好きです……部長のこと」
聞きたいことはたくさんあるけれど、彼の気持ちの奥に触れるには、まだ早すぎる気がした。
というか、私の手がその場所に届くのかもわからない。そもそも、触れる権利があるかどうかも。
だったら、このお芝居に真剣に向き合って、彼の“恋人”を演じるのが、きっと一番彼のためになるんじゃないかって思えて。