エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「巴……」
私の口から「好き」と言われるとは予想していなかったのか、部長は驚いたように目を見開いた。
そうだよね……私自身だって、自分の気持ちに驚いている。
だって、彼のため――だなんて。どうして私、部長のために何かしてあげたいって思うんだろう。酔った勢いで寝た相手に、本気になった? ……まさか、ね。
でも、部長が心に抱える何かが気になっているのは本当。できることならそこに触れて、秘密主義を貫く彼の素顔を見てみたい。
「一誠さんが、好き」
初めて名前を呼び、再度語り掛けつつ見上げた彼の瞳は、切なげに揺れていた。
「うん……ありがとう」
一誠さんは私の肩に顔を埋め、くぐもった声で呟いた。
キッチンで抱き合い、互いの名前を呼んで好きだと告白し合う、この光景を他人が見たら、幸せな恋人たちだと思うんだろう。
でも、私たちの間にあるのは、恋とも愛とも呼べない曖昧で頼りない気持ちだけ。
この関係がどこへ向かっていくのかわからないけれど……約束の一か月が経ったその時には、何か答えが見つかるのかな――。