さようなら、初めまして。
「明日、も?」

ですか?

「ん?そう、明日もだよ」

「ジンさん…」

「ん?」

「暇をもて余してるんですか?」

あ。私…。どうしてこんな事。いきなりこれではちょっとデリカシーのない訊き方に取られてしまうのに。

「え?…あ、んー、なんて返事したらいいと思う?」

あ。『なんて返事したらいいと思う?』…。
昔…その後、ちょっと考えてから言われた言葉……、『暇なんかじゃない、忙しくて堪らない。逢生の事を考えて、頭の中はずっと忙しいんだから。もっとずっと忙しくていい。毎日忙しくていいんだ。だから明日も明後日も会う。頭の中のスケジュールは逢生で一杯にしたいんだ』って…、悠人はそんな事を言った…。私、一気に言われて圧倒されて、何だかボーッとしちゃったんだった。…悠人。私で一杯だって言った、言ってくれた……。なのに悠人…どうして来なかったの?……どうしてるんだろう…。あれは、本気で言ったんじゃなかったのかな……。んん…。

「ん…アイちゃん、アイちゃん?」

「あ、はい。はい」

「食べよう?」

「え?」

あ、いつの間に。もう並べられていた。近くで湯気が上がってる。匂いもこんなにしてるのに、…私。…時間が止まっていたのは私…だけ?あ、じゃあ、ジンさんは、あの後、何て言ったんだろう。それとも、まだ何も言ってないのだろうか。私は、特に耳を塞いで目を瞑っていた訳じゃない、と、思うけど。…あれ…、どうなんだろう。上の空で…失礼だ。

「アイちゃん」

「あ、はい」

「…どうしたの?どこか具合悪くなったんじゃ…。言えなくて、さっきから無理してるんじゃ…」

「あ、ううん、どこも…何でもないです、大丈夫。ごめんなさい。えっと、どうしようかなって考えてたから」

下手なくせに…誤魔化した。

「何を?」

手を拭いたジンさんはカトラリーの容器をこっちに置いてくれた。

「えっと、先に取って貰おうかなって。あ、食べられないと思う分の事です。残すのは嫌なんで」

「あー、いいよ、どんなでも。途中でチョコチョコ貰ってもいいし、もう無理、って言ってから引き受けてもいいし。ハハハ。やっぱり完食は無理なんだよな。俺は気にしないから。好きなように食べてよ。本当に大丈夫?調子が悪いなら無理は駄目だよ?」

「あーはい。本当に大丈夫なんです、ごめんなさい。では、まず頑張る方向でいきます」

「ハハハ、了解。あ、」

「デザート分は空けておきます、そこは所謂別バラ、大丈夫です。
では、いただきま~す」

手を拭き、お水を一口飲み、スプーンを手にした。

「…ハハ、うん。…そうだったな」

…ん?だったな…?何か気になりつつもオムライスを掬って口に入れた。…んーー、これ…この味。美味しい…。
…凄く…懐かしい…。変わってない。…一緒に食べた。
…変わったのは今一緒に食べている人がジンさんだって事だ。
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