さようなら、初めまして。
結局、聞き逃したかも知れない部分は改めて聞かなかった。それより、現在進行の話を続けたからだ。久し振りに食べたハンバーグもオムライスも、前と変わらず美味しくて、かなり頑張って食べたけど、やはり完食とはならなかった。結果、オムライスを残すはめになってしまった。それをよしよし、そうくると思った、と言って、お皿を受け取ったジンさんは余裕で食べた。

マスターの作るモンブランが好きで、デザートがモンブランの日に狙って来ていた。好きなオムバーグとモンブラン、それを、悠人と…。
はぁ……喧嘩なんかしたことなかったのに…。どうして機嫌を悪くしちゃったんだろう。些細な事が気になって、そしたら許せなくて。謝る機会なく…私は。私達は突然、それっきりに…。

「ふぅ、食べたな~。ご馳走さまでした、アイちゃん」

「…え?はい?」

「ん?アイちゃんの分だったから、この分は、ご馳走さま、でしたって意味だ」

あ、そうだ。

「あの、今日のここの分、私に払わせてください。スマートな言い方が出来なくてごめんなさい。お礼がしたくて。男の人から助けてもらったお礼に私が…」

…安いかな。

「駄目」

あ、…やっぱり。黙って奥さんに渡しておけば良かった。言ったら駄目って言われてしまうよね。

「ここは俺がって、決めてるから、駄、目。明日、奢ってよ」

え?

「また、待ってるから。今度はこの店の前で待ち合わせだ」

待ち合わせの約束…そんな話をしてたんだろうか。さっきの空白に…。
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