さようなら、初めまして。
「あ、はい。…誕生日とかに。今は、自分と、大家さんと、友人に……」

誕生日の早い順に…ケーキは自己満足の押し付けみたいなモノだ。でも…なんでケーキを焼く事を…。オーブンだから、…かな。きっとそうだ。

「誘惑される綺麗なケーキは沢山売られてるんですけど、甘くない物が食べたくて。だったら作ってみようかなって。本を買って、道具も揃えて。あとは食べたケーキの雰囲気を真似てみたり。最初は凄く作りました、色んなタイプの物。私、凝り性だけど、熱しやすくて冷めやすいので、今は…、時々です」

…飽きっぽいんだと思う。違う物に興味が移るとパタッとしなくなる。

「…へえ」

…ここで、ジンさんの誕生日とか聞けば…。でも、だからって、どうなんだって、ことになりはしないだろうか。

「焼き上がるときは甘い匂いがするんだろうね」

「……あ、はい。ご存知の通り、部屋、気密性にはもの凄く遠いですから、フフフ、大家さんには、内緒には作れません。だから、当然、サプライズにはなりませんね」

「ハハハ。アイちゃん、もうできたの?なんて、覗きに来そうだよな」

え?

「は、い。その通りです」

まさに、行動も、言い方、そっくりそのままだった。

「…ハハハ、…当たっちゃったな…」

…。想像は簡単につくものね…。そんなものだ。

「ジンさんは、甘い物、平気なんですか?それとも…」

洋食亭のモンブランは好きだと言ってた。

「ん?甘いと言われている物の、甘くなく作ったヤツ、が、好きだ」

また…同じだ。甘くないヤツなら食べるって言ったのと同じだ…。男の人は、大体そうなのかな。私だって、甘~いっていう物はそんなにだから。…洋食亭のモンブランは甘すぎないから好き。

「あの…」

「ん?」

「今日の…無くなっちゃった奢りの代わりにはならないと思いますが、ケーキ、焼いたら、食べてもらえますか?」

…あー、代わりって言わずに、普通にどうですかって言えば良かった。代わりになんてならない程度だし。

「…食べたい」

え?
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